下肢静脈瘤の手術

0.当院の下肢静脈瘤手術の特徴 ~麻酔~

 かつては、腰椎麻酔と言って、翌日まで下半身が麻痺した様になる麻酔で当時は入院が必要でした。その後、現在は、処置する血管の周囲に薄いが大量の麻酔を注入する膨潤TLA麻酔が一般的です。これは、美容整形での脂肪吸引等に開発された方法です。しかし、この注射自体、下肢のいくつかの部位に針を刺すので、痛みを伴います。一般的には、この針の痛みを静脈麻酔などで眠った状態にしてカバーします。しかし、この場合でも深く眠った様になるだけなので、人によっては針を刺した時に体を無意識に動かして処置がやりにくくなる場合もあります。この体動をなくす為に更に深い麻酔にすると今度は、無呼吸症候群の様に舌根沈下で呼吸が出来なくなります。

 →その為、当院では、大腿神経・大伏在神経ブロックを行います。これは、患肢の2か所に採血する程度の針で、局所麻酔薬を3~10㏄程注入します。これだけで、処置する部位へTLA麻酔の針を刺しても痛み自体が感じなくなり、会話しながらでも処置が可能です。麻酔の効果が少ない場合でも、短時間作用の静脈麻酔を少量追加するのみで、痛みが減じて、体動や舌根沈下のリスクが少なくてすみます。当然、吸入麻酔等の追加の麻酔薬も不要で、術後ボーとなる事も少ないです。これにて、人によっては意識を保って声も聞こえるような状態を維持する場合もあれば、緊張しやすい方はいびきをかいて眠るまで意識を落としておくなど、患者さまの状態に合わせて最適な状態にコントロールできます。

 この麻酔は、採血する程度の針で2ヵ所穿刺するだけで、下肢の消毒をしている間に効果が出て、痛みを感じなくなります。この、最初の2ヵ所の注射の部位には表面麻酔クリームを塗って、更に、注射直前に短時間作用性の静脈麻酔で痛みを減じます。

1.血管内焼灼術~(1)高周(ラジオ)波焼灼術

ラジオ波とは、電磁波の一種であり、さまざまな外科・皮膚科・形成外科手術にも応用されています。ラジオ波焼灼術は、逆流を起こしている静脈に細い管(カテーテル)を挿入し、静脈の内側から熱を加えて静脈を焼灼し、塞いでしまう治療です。この高周波治療は、欧米ではレーザー治療よりも最も一般的に行われている治療法です。逆流のある静脈を高周波で焼灼するか、レーザーで焼灼するかの違いで、目的は同じです。自動車で例えれば、レーザーがマニュアル車で、高周波がオートマ車と言われる事があります。レーザーは細かな調整が出来ますが、結果に誤差が生じる可能性があり、高周波は、コンピューター制御により、血管に合わせて結果は均一になる様に自動調整されます。欧米でも高周波は一般的で、焼灼された静脈は逆流がなくなり、その後、自然に吸収され消失していきます。レーザー、高周波治療ともに静脈の閉塞成功率が高く、炎症、内出血などが少ない治療法です。傷跡はカテーテルを挿入するための小さな開口部のみで、傷を縫う必要がないです。2014年に保険診療が認められ、術前・術後の検査を含めて全て保険内で行えます。

大腿の大伏在静脈の場合は、膝付近からカテーテルを穿刺して、鼠径部の大伏在静脈起始部付近迄カテーテルを挿入して周囲に局所麻酔を注入して、同様に焼灼します(下の動画↓).

1.血管内焼灼術~(2)レーザー焼灼術

高周(ラジオ)波と同様に、カテーテルを挿入して、不良な静脈瘤血管を焼灼します。カテーテルがより細く、カテーテル先端部に限局して、エネルギー発声装置がありますので、膝から下の下腿で、カテーテルが少し入いれば、表在の短い静脈瘤も、下記の瘤切除でなく、穿刺・焼灼で処置が可能です。カテーテルが入れれない更に細いが目立った静脈瘤には硬化注入療法を行い、創は針のみで治療する事が可能になります。

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2.血管内塞栓術:人体用瞬間接着剤グルー

2.血管内塞栓術:人体用瞬間接着剤グルー

静脈血管を穿刺して、カテーテル先端を閉塞すべく静脈血管根部近くに留置して、ピストル型ポンプで人体用瞬間接着剤グルーを押し出して、静脈血管を圧迫して接着閉塞させます。2020年から新たに保険収載された治療で、術後の弾性ストッキング着用が不要ですので、弾性ストッキングが履きにくい方にお勧めです。しかし、アレルギー体質の方、静脈瘤が複雑であったりする場合は不向きです。

3.局所瘤切除

3.局所瘤切除

切除と言いましても、最近の傷は、メスではなく、18ゲージ(2.2mm)の太さので皮膚を貫き、その針穴に通る小さなフック型の鉗子を入れてボコボコした静脈瘤の血管を引っかけて引き抜く事を繰して除去しますので、数mm大の針穴の傷が並んだ傷となりますので、暫く時間が経つと次第に目立たなくなります。StabAbulsion(スタブアバルジョン)法と言われます。 <①左上:針を刺して、②右上:フック型鉗子を入れて、  ③左下:静脈瘤を引っ掛けて取り出す、④創は小さく無縫合3箇所(注:写真の他の部位の赤いのはマーキングの赤マジックです:その点より創は小さいです)>

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4.硬化療法:比較的軽度の下肢静脈瘤に

4.硬化療法:比較的軽度の下肢静脈瘤に

硬化療法とは静脈内に硬化剤を注入し、血管を固めて徐々に吸収させ、問題となる血管を消してしまう方法です。閉塞した静脈が組織に吸収されて消えた後は正常な静脈に血液が流れ、症状が改善されます。注射後は患部の圧迫を1か月ほど継続して改善を図ります。硬化剤を注射するだけで済むことから、患者さまにとって負担が少ない治療法といえます。一般には、上記のカテーテルでの血管内治療の適応となる大きな血管以外の伏在型静脈瘤や、網目状静脈瘤・クモの巣状静脈瘤といった細かい静脈瘤の治療に用いられます。

★診療の流れ

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1初診時

問診と診察を行い、超音波検査で静脈瘤の原因となる血管を確認して、治療方法を決定します。ラジオ波焼灼術による手術を行う場合は採血、心電図、レントゲンなどの術前検査を行い、手術について詳しい説明をさせていただき、手術日を決定します。診察にかかる時間は1時間程度です。硬化療法の場合は、時間があれば、その日に治療も可能です。

2手術当日

血管愛治療の場合、空腹に近い状態で午前11:30頃に来院していただきます。手術は午後1時~2時頃で、3時頃には帰宅です。同日、2例目の場合は、午後1時半頃来院で、2時~3時頃手術で、4時頃には帰宅です。なお、硬化療法の場合は普段の診察時に5分程で終了します。

3手術後

基本的に手術翌日、1週間後、1か月後に来院していただいき術後の経過を見ます。手術翌日からシャワー、翌々日から入浴が可能です。手術後1週間は、弾性ストッキングを入浴時以外終日、術後1週間~1ヶ月は昼間のみ弾性ストッキングを着用して頂きます。(ただし、最近は、それほど厳密に弾性ストッキング着用も不要との意見もあり、夏など弾性ストッキング着用があつくて困難な時には、適宜なしでもよいかと考えれます。)

手術後注意点

手術後に気をつけていただくこと

手術後は弾力包帯で患部を固定します。手術翌日にご来院いただいて包帯を取り、超音波検査を行います。問題がなければその後1週間、お風呂の時間以外は弾性ストッキングを履いて過ごしていただきます。1週間後に再び経過を確認し、その後1か月ほど経つまでは日中のみ弾性ストッキングを履いていただきます。就寝時はストッキングは抜いでも構いません。術後1か月の超音波検査で問題がなければ以後は経過観察です。手術後は血栓を作らないようにできるだけ歩くなど身体を動かしていただき、しっかり水分を摂って頂きます。術後の過ごし方については、専門のスタッフからも丁寧にご説明いたします。また、帰宅前に、夜間・休日でも対応の電話番号をお伝えしており、24時間体制でアフターフォローをしております。何か心配なことがあった時にはいつでもお電話ください。

★下肢静脈瘤治療の費用

下肢静脈瘤の治療・手術は健康保険適用の対象になります。治療費は3割負担の方で以下が目安です。2割負担、1割負担の場合は、各々、この2/3、1/3の値段です。詳しくはお問い合わせください。

初診時(初診料、術前検査一式) 約6,000円
血管内焼灼術:レーザー/高周波ラジオ波 2020年4月診療改定で38,000円と減(片足:3割負担)。それまでは約50,000円でした。
血管内塞栓術:人体用瞬間接着剤グルー 2020年から新たに保険収載。片足:3割負担で、約50,000円
手術後の検査 1,000円前後(手術1~2日後、一週間後、1か月後)
硬化療法 約5,000円

なお、70歳以上の方は一般に医療費が1~2割負担であるほか、外来の高額療養費の自己負担限度額が18,000円(月額、一般所得者に該当する場合)の保険制度があります。

★また、当院では、日帰り入院(0泊入院)にも対応しております。任意保険で、日帰り入院(0泊入院)に対応した保険に入れれている方は、お申し出下さい。

下肢静脈瘤についてのQ&A

Q

保険は適応されますか

A

【下肢静脈瘤血管内焼灼術:K617-4】の保険術式で、レーザーもラジオ波もこの血管内焼灼術に含まれ、保険適応です。

Q

血管を焼いて塞いでしまっても大丈夫ですか。その血管を流れていた血液はどうなりますか。

A

静脈瘤の原因となっている血管を閉塞させてしまっても、足全体の血流には問題ありません。血液は自然に残っている血管を通って流れるようになります。

Q

手術後は患部は綺麗になりますか。

A

通常綺麗に治ります。まれに術後皮下出血が起きても1か月以内に消え、手術前に見られた皮膚の色素沈着も時間とともに薄くなっていきます。手術時の皮膚切開の範囲も短いため、傷はほとんどわかりません。また当院では、手術前と手術後の写真を比較していただくことで違いをはっきり感じていただけます。

Q

再発はありますか。

A

古い機器では多少の痛みや再発が認められたようですが、現在当院で導入している最新の治療機器「Venefit」では痛みや腫れが抑えられ、再発率も格段に低くなっています。再発した場合でも、大小伏在静麻の太く主要な静脈が焼灼されていれば、硬化剤を注入する硬化療法や、目立つ部分の瘤切除などで対応します。

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レーザー治療と高周波(ラジオ波)焼灼術の違い(共に血管内焼灼術に該当し保険適応です)

下肢静脈瘤のレーザー治療とは、静脈に細いカテーテルを入れて、血管の中からレーザーを照射して血管を閉塞させる方法です。ラジオ波による手術と同様に近年広く行われている手法です。静脈壁の焼灼において術者が病変の状態によって調整出来る事が利点です。一方高周波(ラジオ波)ではその特性とカテーテルの形状などから、均一に静脈壁を焼灼することが可能です。患者さまに合わせた細かい調整ができることがレーザー治療のメリットで、手技の面で均一的で、操作が比較的シンプル、早く出来るのが高周波(ラジオ波)です。レーザーでも高周波(ラジオ波)でも共に血管内を焼灼する方法の違いで、行う目的は同じです。

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高周(ラジオ)波の長所 7cm毎にを20秒ずつ、コンピューター制御により120℃と一定温度に保って均一に一度に広い範囲で焼灼するのに有用です。
高周(ラジオ)波の短所 焼灼範囲が短い場合は、7cmより3㎝焼灼用のカテーテルを用いますが、それより短い範囲などは、困難です。
レーザーの長所 カテーテル先端からの焼灼で、焼灼すべく静脈の最根部から短い範囲でも調整して焼灼できます。根部0㎝からの焼灼、表在瘤の焼灼、穿通枝の焼灼、下腿遠位部までの焼灼などに応用されます。
レーザーの短所 長い範囲を焼灼する場合、時間がかかります。カテーテル先に炭化物が付着してしまう可能性があります。

下肢静脈瘤の手術で心がけていること

下肢静脈瘤の手術で心がけていること

当院で行う下肢静脈瘤の日帰り手術では、体への負担や痛みを極力抑えつつ、丁寧な施術を心がけています。下肢静脈瘤は良性の病気であり、直接的には命には係わりませんが、まれに下肢静脈瘤の原因となっている大伏在静脈などの血管に大きな血栓(血の塊)ができることがあります。血栓が原因で血栓性静脈炎を起きると、足が赤く腫れて痛むケースが起こり得ます。その血栓がちぎれ、さらに太い大腿静脈の中を流れて肺に至ってしまうと、肺動脈を詰まらせて呼吸困難に繋がったり、肺動脈塞栓症などのさらに重篤な病気を引き起こす危険性があります。そのような状態を回避できるよう細心の注意を払いながら、事前にしっかりと検査を行い、静脈瘤のタイプや患者さまの状態によって適応を見極めてもっとも適切な治療を選択します。

症例

グルー接着剤塞栓術

 78歳、女性
【術前診断】右下肢静脈瘤 (右大伏在静脈弁不全)
【麻酔】静脈麻酔+TLA膨潤麻酔+大腿神経前皮枝・大伏在神経ブロック
【手術】下腿中央部より穿刺大伏在静脈を穿刺してグルー注入塞栓。
下腿遠位と表在瘤に泡状硬化療法。下腿瘤切除1カ所
【手術時間】50分
【医院滞在時間(来院~帰宅迄)】約2時間半
【手術後】手術後30分で歩いて帰宅。
術翌日、家族の車送迎で歩いて来院。下腿部内側軽度痛み

術8日目、下腿部内側軽度圧迫時痛程度

【症例写真】

①術前

②術前近接

③術前マーキング

④術後8日目

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Q

最新の下肢静脈瘤塞栓術(グルー治療)について教えて下さい。

A

グルー治療(血管内塞栓術)は、下肢静脈瘤の原因である伏在静脈に医療用の瞬間接着剤を注入して血管を閉塞する治療法です。
欧米では広く普及しており、日本でも2019年12月からベナシールVenaSealクロージャーシステムが保険診療で使用可能となりました。
その費用は、3割負担なら、片足5万円程度ですが、一般の高齢者の場合は両足でも負担上限額が適応されると約18,000円です。
そのメリットは血管内焼灼術とは異なり、熱を使用せずに治療を行いますので、血管周囲の神経や組織にダメージを与えるリスクは少ないことです。
また、局所麻酔のみで手術が行えること、静脈血栓症のリスクが低いことです。

一方、、接着剤による静脈炎(炎症)やアレルギーが起こる可能性が起こる場合があります。
またこの接着剤は血管を塞栓した状態で長期にわたって残り、閉塞した血管と共に少しずつ吸収もされますが、そのスピードはゆっくりで、長期報告は少ない治療です。

なお、下記の場合は慎重適応です:
・シアノアクリレート系接着材(まつエク、アロンアルファなど)のアレルギーを持っている方
・シックハウス症候群にかかったことがある方
・人工爪の施術者やまつ毛のエクステンションを行っている方
・下肢蜂窩織炎を合併している方
・感染症を発症しやすい方
・免疫の病気やアレルギーを持っている方