痔の手術・治療

痔の手術で心がけていること

痔の治療法には、生活習慣の改善や薬物療法を中心とした保存療法と、手術を行う外科的療法があります。基本的にはまず保存療法で様子を見るのが一般的ですが、難治で生活に支障を及ぼすようなら手術を行うことになります。手術内容は痔の種類や症状によって変わります。痔の手術は、日々排便がある部分で、見づらい場所でもあり、注意が必要です。特に出血、肛門の変形、また術中や術後の痛みを感じない様に工夫をしています。

以下の手術はみな当院で日帰り手術で可能です。

ジオン硬化注入療法(ALTA療法)

内痔核を注射で治療

ジオンという特殊な薬剤を内痔核内に注入することで、痔核を硬化させる治療です。ジオンは出血や脱出の状況を改善する「硫酸アルミニウムカリウム水和物」と、その働きを調節する「タンニン酸」という成分からできており、脱出を伴う内痔核にこの液を注入することで痔核に炎症が起こって瘢痕化(癒着・固定)されて出血や脱出がなくなります。痛みを感じない部分に注射するため、出血や痛みも少なく、入院も不要で、5分程度の処置です。

PPH法(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids:脱出と痔に対する手術法)

全周性の内痔核を綺麗に治す器具での手術法

内痔核の脱肛は、直腸内の粘膜が緩むことが原因で起こりえますが、内痔核が全周性に及ぶ場合、従来の様に肛門部で直接痔核を切除すると肛門が全周性に傷つけられ、術後、肛門狭窄などが起こりえます。PPH法は従来の方法と違って、脱出した痔粘膜を持ち上げる様に挙上し、切除予定部の直腸粘膜に糸をかけて、同糸を牽引して自動吻合器にて余分の直腸粘膜を吻合器に挟んで同余分粘膜を同時切除(直腸粘膜環状切除)吻合し、結果として脱出した痔粘膜を挙上します。縫合後は特に時間をかけて丁寧に止血を行い、安全な施術を心がけています。術後の痛みが少なく、肛門を傷つけることも最小限です。

分離結紮

内痔核や外痔核の治療で行われる手術法

いぼの部分を一塊に糸を通して結紮して壊死させます。

ゴム輪結紮法

小さめの内痔核に効果のある手術法

痔核を切除するのではなく、その部分をゴムでくくってしまう治療法です。静脈がこぶのようになっている痔核の根本付近に特殊なゴムをかけて、痔核を壊死させて脱落させます。痔核を切除する方法よりも術後の痛みが少なく、あまり大きくない痔核に効果的です。術後に痛み止めを入れますが、多少の痛みや違和感を感じる場合もあります。

血栓除去術

血栓性外痔核の治療で行われる手術法

血栓性外痔核は肛門にできた血豆の様なもので、一般的には先ずは軟膏などの保存療法で経過をみますが、病変が大きい場合や難治の場合、気になる場合は、病変の部分の皮膚を切開して血栓を取り出します。

創開放法

痔瘻の治療で行われる手術法

根治性が最も高く、最も頻用され、手術操作も簡便です。しかし、前方や側方の痔瘻の場合、肛門括約筋に損傷を与えうるので、後方の痔瘻に用います。

シートン法

痔瘻の治療で行われる手術法

痔瘻は、歯状線(直腸粘膜と肛門上皮の接合部)部の陰窩(同部の腺の開口部)から細菌が入って膿が溜まって肛門周囲膿瘍となり、それが肛門周囲の皮膚に開口して排膿されても、その部分が管(瘻管)と言うトンネルの様に陰窩(一次孔)と肛門周囲の皮膚の孔(二次孔)が繋がってしまう病気です。こうなると自然には治らず、長期に放置すると癌化も懸念されるので、手術が必要です。治療は、この瘻管を切除して再び細菌が入り込まないようにする必要があります。後方の痔瘻にはそのトンネルを開いてしまう創開放が簡単で根治術も高いです。しかし、前方や側方では創を開放すると肛門の変形や便が漏れることがあり、そのため、瘻管部にゴム輪を通して徐々に創を開放すりシートン法を行います。細菌の侵入口となった肛門陰窩を一次孔、膿の出口である皮膚側の穴を二次孔と呼びますが、この一次孔・二次孔を見つけることが痔瘻の根治にはもっとも大切です。

くり貫き法

痔瘻の治療で行われる手術法

操作がやや煩雑で、再発の率が高くなりますが、肛門機能には最もやさしい術式です。

皮膚弁移動術(SSG)

裂肛の治療で行われる手術法

裂肛切除部の粘膜側と皮膚側を縫合し、皮膚側に三日月状の減張切開を加えます。

側方内括約筋切開術(LSIS)

裂肛治療で行われる手術法

側方で内括約筋の一部を切開し肛門の狭窄を改善します。

振分け結紮

裂肛の治療で行われる手術法

潰瘍、見張り疣、肥大乳頭を一塊に糸を通して結紮して壊死させ、新たな治りやすい創に変換して自然治癒させます。

直腸粘膜縫縮術+肛門輪縫縮術(Gant-三輪+Thiersch法)ガント-三輪+ティールシュ法

直腸脱の治療で行われる手術法

直腸脱は、肛門の締りが不良で腸が出てくる病気です。脱出する直腸の余分の粘膜を少しずつ多数縫縮し(直腸粘膜縫縮術)、更に肛門の周りに伸縮性の人工靱帯を埋込み肛門の出口を絞り込みます(肛門輪縫縮術)。

痔の手術の麻酔について

当院で行う痔の手術では、主に仙骨硬膜外麻酔という麻酔を使用します。仙骨硬膜外麻酔とは、仙骨というお尻の割れ目上方にある骨の仙骨裂孔という穴から注射を行う方法です。肛門中心に麻酔がかかる安全性の高い麻酔で、しかも短い時間で麻酔の効果が切れるため、日帰り手術に適した麻酔といえます。これに静脈麻酔を加えて術中の不安や緊張をとります。仙骨硬膜外麻酔で効果が不足する場合は、局所麻酔を随時追加致します。特に日帰り手術においては、複数の麻酔方法を組み合わせることで、副作用の心配のない効果的な麻酔を可能にしています。

手術の流れ

1初診時

問診と診察を行い、肛門鏡検査をした上で治療方法を決定します。ジオン硬化注入療法を選択した場合は、その日のうちに注射を行うケースもあります(5分程度です)。手術は外来でその日の内にできる手術と、PPH法やシートン法など予約日を決めて後日行う手術に分かれます。PPH法などでは採血やレントゲンなどの術前検査を行い、手術について詳しい説明をさせていただいた上で、必要があれば手術日を決定します。

2手術当日

当日は絶食し、水分摂取もできるだけ控えて、排便を済ませてくるようお願いしています。PPH法であれば午前11:30頃に来院していただきます。特別な持ち物は必要なく、通常の外来診療の感覚で来ていただいて問題ありません。ただし、お化粧やマニュキュアはなしでお願いします。午前診療が終了した午後1時頃に手術を行います。PPH法は30分~60分で、痔瘻の手術もその程度です。術後しばらく休んでいただき、4時頃にご帰宅となります。

3手術後

手術内容によりますが、1週間から10日前後や、1か月程度を目安としてご来院いただき、術後の経過を見ます。ジオン硬化注入療法を行った場合は、効きやすい体質の方であれば翌日から出血や脱出がなくなります。

手術後に気をつけていただくこと

下痢や便秘などの排便の異常は痔の再発に繋がるため、便通をよくして肛門付近にうっ滞が起こらないように心がけることが大切です。トイレでは3分以上いきまず、繊維質や水分を多く摂るようにして自然な排便を促しましょう。座りっぱなしの体勢はできるだけ避け、お風呂にゆっくりと入ってリラックスすることや睡眠時間を多く取ることも効果的です。術後の過ごし方については、DSコーディネーター(日帰り手術専門の看護師)からも丁寧にご説明いたします。日帰り手術を受けていただいた方には執刀医である院長自身の電話番号をお伝えしており、24時間体制でアフターフォローをしております。何か心配なことがあった時にはいつでもお電話ください。

痔の治療・費用

痔の治療・手術は健康保険適用の対象になります。治療費は3割負担の方で以下の通りです。

なお、70歳以上の方は一般に医療費が1割負担であるほか、外来の高額療養費の自己負担限度額が14,000円(月額、一般所得者に該当する場合)と保険制度で定められています。PPHでの日帰り手術を受けていただく場合に、14,000円を超える金額は保険でカバーすることが可能です。他の方法では1割負担ですと5,000円程度です。

ジオン注射 約15,000円
PPH法による手術 約50,000円
分離結紮、血栓除去術 約4,500円
痔瘻の手術 約15,000円
裂肛の手術 約15,000円
直腸脱 約60,000円

以上の金額は目安で、麻酔法なども変わります。

なお、70歳以上の方は一般に医療費が1割負担であるほか、外来の高額療養費の自己負担限度額が14,000円(月額、一般所得者に該当する場合)の保険制度があります。

★また、当院では、日帰り入院(0泊入院)にも対応しております。任意保険で、日帰り入院(0泊入院)に対応した保険に入れれている方は、お申し出下さい。

痔についてのQ&A

Q
治療や手術は痛みがありますか。
A

治療方法によって変わります。ジオン注射については肛門を広げる際に多少の痛みを感じることがある程度です。PPH法やシートン法による手術も、場合によっては突っ張るような感覚を感じることはありますが、昔から行われていた痔核切除術と比較すると痛みは格段に小さく、またしっかりと麻酔を効かせるので、痛みに不安を持たれている方もご安心ください。

Q
薬局などで手に入る市販薬は効果がありますか。
A

初期の痔であれば市販薬で対応することもできますが、ご自身の判断で痔と考えて市販薬で治療を続けていく中で、大腸がんなどの重篤な病気を見過ごしてしまうこともあります。万一のことも考えて、気になる症状がある時には早めに来院されることをおすすめします。また、医師が処方する軟膏は患者さまそれぞれの病状に合わせてもっとも必要な成分が配合されており、市販薬より効果が高くなります。

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