鼠径ヘルニア(脱腸)の手術

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術について

当院で行う鼠径ヘルニアの日帰り手術では、まずは安全を第一に心がけてながらも、傷は小さい範囲(人差し指と器具が入る程度の2~3cm長)で行っています。鼠径ヘルニアの手術では、ポリプロピレン製のメッシュを筋膜の緩んだ部分の内側に留置し、腹圧をかけてもメッシュが逸脱しない様に補強するダイレクト・クーゲル法とよばれる手法を主に採用しています。従来の筋膜と直接縫合する方法に比べて痛みも少なく、また再発率が低い手術です。小さい創でもメッシュの位置を綺麗に広げるようにしています。

 
 

↑上写真の様な小さな創で、下図↓(左は前面から、右は後面から見た図)の様なメッシュで腹壁を補強します。

前立腺癌術後など腹膜前腔の剥離が困難な場合や、抗凝固剤・抗血小板剤など俗に言う血液がサラサラの場合は、腹膜前腔の剥離の少ないメッシュプラグ法(バドミントンの羽の様な形のメッシュをヘルニア門に挿入する)を行います。

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術の麻酔について

従来、鼠径ヘルニアの手術で行われていた腰椎麻酔は、翌日まで下半身が麻痺した状態となり、翌日まで歩くことができず、入院が必要でした。日帰り手術が可能になったのは、それ以外の方法で麻酔を行うからです。実際には、静脈内麻酔、吸入麻酔などの全身麻酔と局所麻酔を組み合わせ、更には、神経ブロックや硬膜外麻酔などを組み合わせたバランス麻酔を行います。この際、すぐに効いて短い時間で切れる薬剤が開発されたことも日帰り手術が可能になった要因の一つです。当院では普段、局所麻酔で痛みをとり、全身麻酔で眠った状態として、自分で呼吸した状態、或いは、必要によって、呼吸器を使用して、手術を行います。この全身麻酔では一切痛みを感じることはなく、目が覚めたら手術が終わっています。また意識下での手術を希望される方や術中、腹圧をかけてヘルニアの脱出を確認しつつ手術を行う場合のは、麻酔科専門医の予定日(主に土曜日)に、脊髄のすぐ近くにある硬膜の外側に麻酔薬を注入する硬膜外麻酔下での手術も可能です。

   

受診~手術の流れ

1初診時

問診と診察、超音波検査のほか、ヘリカルCTによる検査を行います。患部の状態を確認した後、治療方法を決定します。手術を行う場合は採血、心電図、レントゲンなどの術前検査を行い、手術について詳しい説明をさせていただき、手術日を決定します。CTは特に事情がない限り、即日撮影が可能です。

2手術当日

事前に患部付近の剃毛をしていただきます。ご自分で難しい場合は、当院で対応致します。当日は午前11時半頃に来院していただきます。それまで、絶飲食が基本ですが、少量の飲水なら10時までは可能です。普段お薬を飲まれている方は、内服可か不可か、指示させていただきます。特別な持ち物は必要はありません。お化粧や指輪、イヤリングはせずに、お越しください。その他は、通常の外来診療の感覚で来ていただいて特に問題ありません。午前診療が終了した午後1時頃から手術を行います。手術はヘルニアの程度にもよりますが1時間程度で、術後しばらく休んでいただいた後、4時頃に帰宅となります。

3手術後

手術の数日後に来院していただき、創部のチェックや問診を行います。お風呂は、術翌日からシャワーより開始し、その後、入浴可能です。術後数日はできるだけ安静が理想です。術翌日には、寝起きなど腹筋に力が入る時に痛みがありますが、鎮痛剤で対応可能で、安静にしていれば、強い痛みはありません。その後、7~10日後頃に来院いただいて、創部のボンドとテープを除去します。吸収糸で縫合するため、抜糸の必要はありません。それまでは、デスクワーク等軽い作業であれば仕事は可能です。さらに必要なら、術後1ヶ月頃に再診いただき、それまでは、ゴルフや力仕事は避けることが理想です。

・【術当日】:手術お疲れさまでした。術直後は痛みなく普通に歩けますが、無理をしないで下さい。同日、夕食後に鎮痛剤などを内服して頂きます。これは抜歯の後の様に麻酔が切れてくると夜間に痛みが出る事への予防です。

・【術後1日目】:朝起床時や体動時、咳、笑った時など腹筋を使う時に、筋肉痛の様な痛みがありますが、鎮痛剤などで対処可能で、朝以降次第に痛みは減じてきます。この日1日は、寝ている等できれば自宅で安静にしていると楽です。状況把握のためこちらから電話連絡にて問診させて頂きます。

・【術後2日目】:軽い仕事なら半日程度なら出勤もできると思いますが、無理をしないで下さい。

・【術後3日目】:平均的な日常復帰日で、軽い仕事なら終日出勤可能ですが、無理をしないで下さい。

・【術後4日目】:この頃に外来に来て頂き、術直後の様子を聞かせて頂きます。創部チェックなども行います。

 ・【術後7日目】:次第に慣れて、普通の生活も、ほぼ苦になく可能です。

・【術後10~11日目頃】:再度術後の様子と創部チェックを行います。遠方など再診が困難な場合、これで終診です。

・【術後35日目後頃】:創部直下などのしこりを心配される方がみえますので、再診して頂き、しこりが縮小傾向で、術前の様なヘルニアの出入りが無い事を確認させて頂きます。(遠方など再診が困難な場合は省略可能です)

手術後に気をつけていただくこと

クーゲル法は、形状記憶で自然に広がるメッシュを筋膜の下に挿入する手術法です。プラグ法の場合もそうですが、手術後は、念のため、メッシュのずれや痛みを防ぐため、咳をする時やお腹に力を入れる時など、手で患部を軽く押さえていただくと安心です。術後数日、特に術翌日は安静が理想で、以後次第に軽快し、術後1週間までは、入院している程度の活動(仕事ならデスクワークや軽い作業程度)が理想です。力仕事や激しい動きを伴う活動は1か月以後が理想です。また日帰り手術を受けていただいた方には院長自身の携帯電話番号をお伝えしており、24時間体制でアフターフォローをしております。何か心配なことがあった時にはいつでもお電話ください。

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術の費用

鼠径ヘルニアの治療・手術は健康保険適用の対象になります。治療費は3割負担の方で以下の通りです。

初診時(問診・視触診、採血、心電図、レントゲン検査、超音波検査、CTなど) 約10,000円
メッシュによるプラグやダイレクトクーゲル法による手術 約50,000円

なお、70歳以上の方は一般に医療費が1割負担であるほか、外来の高額療養費の自己負担限度額が14,000円(月額、一般所得者に該当する場合)と保険制度で定められています。

★また、当院では、日帰り入院(0泊入院)にも対応しております。任意保険で、日帰り入院(0泊入院)に対応した保険に入れれている方は、お申し出下さい。

鼠径ヘルニア(脱腸)についてのQ&A

Q
鼠径ヘルニアになる原因は何ですか。
A

男性では精管、女性では子宮を支える靭帯に沿って、腹膜が突出して出てくる(関節)外鼠径ヘルニアと、年齢ともに腹壁の筋肉が弱まり、咳や喘息、便秘、排尿障害などで腹圧が繰り返してかかった場合などに発症する(直接)内鼠径ヘルニアがあります。女性の場合は下肢への血管に沿って発症する大腿ヘルニアなどがあります。

Q
必ず手術を受けなくてはいけませんか。
A

鼠径ヘルニアは良性疾患であり、必ずしも手術をしなければならないと言う事はありませんが、手術以外には治療法がなく、患部を外から押さえるバンドやサポーターなども作られていますが、一時的に膨隆をおさえるのみで、長期に使用すると、患部の炎症で癒着や増大が進むと手術がやり難くなります。また腸など内蔵が脱出して戻らなくなり、血液が通うわなくなると組織が腐り始める嵌頓という状態になると緊急手術が必要です。時期をみて早めに手術を受けることをおすすめします。

Q
再発はありますか。
A

従来行われていた筋膜を縫い合わせる手術は、弱くなっている筋膜が裂けて再発する恐れがありました。しかし、現在では縫合部が避ける心配はありませんが、メッシュがずれたり、メッシュが当たっていない部位からヘルニアが膨隆するということはありえます。一般に再発率は1~5%と言われています。

術後考えられる合併症

 合併症は、入院でも外来でも、どこの施設でも、起こりうる可能性があるため、事前に説明を行い、これらの予防に最善を尽くします。

1. 出血 術後、圧迫で自然止血しない場合は再手術となりますので、術中、十分止血確認を行います。

2. 陰嚢の腫れ、手術した部分の腫れ
手術時の出血、浸出液が、ヘルニアを取り除きぽっかりと空いた空間に溜まることで生じます。ちょうどヘルニアで腫れてくる場所と同じなので、「再発した」と間違われる方もいらっしゃいますが、ヘルニアは、寝たり、手で押したりすればこの膨らみが平らになるのですが、術後の腫れは常に膨れているという違いがあります。腫れること以外の症状はないことが多いのですが、違和感を伴うこともあります。通常数ヶ月ほどで自然に回復していきます。溜まっている液体が多い場合には、注射針を刺して液体を抜くこともあります。いずれにしても外来で経過観察可能です。

3. 精巣動静脈損傷、精管損傷
癒着が強い場合、精巣動静脈損傷、精管損傷をきたすと、睾丸痛、睾丸の腫大、睾丸萎縮から不妊の原因となえます。

4. 神経障害
鼠径部や陰嚢、太ももの内側に行く神経が傷つくことにより発症します。ヘルニアの袋のすぐ近くを神経が通っていて、この神経が傷ついた場合、しびれや痛み、違和感、感覚麻痺などの症状がでますが、時間とともに改善していくことがほとんどで、多くは半年〜1年の間に自然に良くなっていきます。本当につらい場合は、再手術でメッシュを除去したり、神経を切除したりする手術もあります。

5. 創感染
手術創に細菌がついて傷が膿むことがあり、通院が長くなる事があります。
基本的にはご自宅で良く化膿した傷口を、直接シャワーなどで洗ってもらうことで改善していきます。

6. メッシュの感染
強力に抗菌剤を使用する必要があるため、入院もしくは連日の通院が必要になることがほとんどです。
抗菌剤が無効、感染が長く続く場合にはメッシュを除去する手術が必要となります。

7. 再発
報告によりばらつきがありますが、1〜5%程度といわれています。前回手術が不完全だった場合もありますが、別の穴から出てくることもあります。基本的には再手術が必要となります。

その他、予期しない場合に対しても、専門病院と連携をとり、紹介・治療などを行います。

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